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精進湖の枕状溶岩

富士山の北西山麓にある「青木ヶ原樹海」は、いまから約1100年前の貞観噴火によって流出した溶岩流の上に樹木が成長した景観をさすようです。噴火は大室山の南東にある長尾山、氷穴火口、石塚火口、下り穴火口などからなる全長5kmの2列にならぶ割れ目火口から発生しました。当時、この付近には本栖湖とせのうみと呼ばれる大きな湖があったのですが、溶岩流は本栖湖とせのうみに流入し、せのうみの大半を埋めたて、残った部分が精進湖と西湖になって残っています。

西湖と精進湖本栖湖の水面の高度がいずれも900mほどで、連関して水位が変動することから、トンネルでつながっていると比喩されることもあります。これは、これらの湖を埋め立てた、溶岩流がいかに隙間が多いかを示唆することだと思います。

この、せのうみが存在したということは古文書に書かれていますが、その位置や広がりについては詳しいことはわかっていませんでした。貞観噴火の規模、すなわち青木ヶ原溶岩流の体積を正確に算定する為には、埋め立てられる前のせのうみの水深を明らかにすることが必要です。そこで、2002年にせのうみのほぼ中央部と思われる地点で、深さ160mに達するボーリング調査が行われました。その結果深さ135mまで青木ヶ原溶岩流が続いており、その下には湖の底を特徴づける珪藻土が確認されました。
また、青木ヶ原溶岩流の上部70mが陸上での体積を示す赤色酸化が認められました。一方、深度70mから135mまでは、水中で堆積したことを示す、枕状溶岩の構造やハイアロクラスタイトと呼ばれる自破砕溶岩や火山砂が多く確認できました。この深度を標高に置き換えると、ちょうど900m程になり、現在の西湖や精進湖の湖面の高度と同じになります。

千葉他 富士火山
千葉ほか 新砂