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雲仙岳噴火

雲仙は1990年11月17日に197年ぶりに噴火を始めた、最初は普賢岳の頂上にある地獄跡火口からの水蒸気爆発であったが、徐々にマグマ性に変化し、やがて火口周辺に降下した細粒火山灰の影響で土石流が発生するようになってきた。そして5月20日、地獄跡火口からマグマそのものが頭を出した。溶岩ドームの成長の始まりだった。山の上の急斜面の縁にある小さな火口から1日あたり30万立方メートルのマグマが出始めたのだ。しかも、このマグマは粘性が高かったから、溶岩流となって流れ出すことはなく、溶岩ドームとして不安定な山頂にどんどん成長をはじめた。やがて火口を覆い尽くした溶岩は、斜面の上部に不安定な形で乗る状態となった。5月26日、その一部が崩壊し、下流側の斜面の谷底に入って大きな噴煙を上げながら走った。これが最初の火砕流であった。
この溶岩ドームの成長速度を計測することが、すなわちマグマ噴出レートに他ならず、写真測量による計測が行われた。当初は水無川に上流部の深い谷を埋め立ていたので、空中写真測量で作成された、等高線図をもとに断面図を作成し、三角柱を積算して求めた。溶岩ドームが崩壊すると火砕流となって斜面を流下する。その際に、岩石の中の微細な気泡内部の高圧の火山ガスが次々に爆発して大きな噴煙を上げるのだ、これはまさに火砕流に他ならなかった。火砕流となって堆積した溶岩ドームは、粉砕されており、粒子同士の間には空隙が損際した。ドームの崩壊量を1とすると、堆積した火砕流堆積物は約1.5となることが経験的に明らかとなった。このため、地形変化量=マグマ噴出量ではなく、溶岩ドーム成長量+
火砕流堆積物の増加量*0.6がマグマ噴出量ということになる。空中写真測量には誤差がある。特に、現地が危険で立ち入れないこと、新しく火砕流が堆積した谷は、発生前には樹木で覆われていたので、噴火前の地形面の高さには、樹木の高さ分を差し引く際の誤差が含まれている。この誤差は、斜面傾斜が急である場合には、きわめて大きくなり、3m以上堆積していないと、正確な値を求めることができないという状況であった。現在では、航空レーザー計測を行うことができるので、それほどの誤差はでないが、樹木で覆われた地形の噴火前のレーザー地形測量が行われていなれば同じ問題に直面することになる。
したがって、計測間隔を空けるほど、地形変化量が大きく、S/Nがよくなり、結果的に測定精度がよくなると言うジレンマが生じることになった。