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火山性地殻変動

1.4.7 地殻変動

火山活動に伴い、地表面に断層変位が生じたり、局地的な隆起や沈降を生ずることがある。これを「火山性地殻変動」とよぶ。一般的に、地殻変動はもっと長期的な広域的なものに使う用語であるが、火山活動に伴って生じた変形に対しても使用する。特に、潜在円頂丘の形成の際には、真上だけでなく周辺の広い範囲まで様々な地殻変動が観察される。このような地殻変動の影響範囲に、人間社会のインフラが含まれる場合、建物が、傾き破壊されたり、道路がずれるなどの、火山災害を生ずることがある。このような火山性地殻変動は、マグマの粘性や噴火様式と密接な関係がある。ここでは、デイサイト質マグマの例として有珠山玄武岩質マグマの例として伊豆大島を取り上げる。
なお、小笠原硫黄島などでは、噴火を伴わない、長期的な地殻変動も観測されている。


(1)1944年昭和新山

昭和新山は、有珠山の北東山麓で、水蒸気爆発を伴いながら1944-45年にかけて成長した側火山である。昭和新山の成長過程は、三松正夫によって克明なスケッチが多数残されている。その後、それぞれのスケッチの稜線を重ね合わせ、ミマツダイヤグラムが作成された。このダイヤグラムをみると、まず潜在円頂丘である屋根山ができ、その後中央部を突き破るようにマグマ本体からなる円頂丘が成長したことがわかる。この昭和新山が成長を続ける間、昭和新山の東側を通っていた国鉄胆振線は、地殻変動によって線路が変形し、何度も修復や移転を繰り返している。


図-1.4.7.1 昭和新山溶岩円頂丘の成長を示すミマツダイアグラム(2,5kmから観測)1)(三松,1962)
https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/usu/vr/images/8/84/Mimatsu-diagram.jpg


(2)2000年有珠山噴火

2000年噴火は、前兆となる群発地震のあと、3月29日に西山西山麓で突然マグマ水蒸気噴火で開始した。その後、多数の小火口が形成され、マグマ水蒸気爆発ー水蒸気爆発が発生した。また、火口群の間には多数の小断層が形成された。最終的に一帯は約70m隆起したので、地下に潜在円頂丘が形成されたものと解釈された。


図-1.4.7.2 洞爺湖畔の噴火記念公園に生じた断層(千葉撮影)

図-1.4.7.3 隆起中心部のグラーベン状凹地(千葉撮影)国道の法面から撮影

図-1.4.7.4 断層群によって階段状を呈する国道(千葉撮影、実体視使用、平行法)

図-1.4.7.5 隆起によって生じた湖(千葉撮影)

図-1.4.7.6 2000年噴火に伴う断層と火口の分布(アジア航測のホームページより)


(3)1986年伊豆大島噴火

1986年の噴火は、11月15日に始まった。当初、三原山中央火口でのストロンボリ式噴火であったが、11月21日から割れ目噴火を開始した。割れ目噴火開始直前に三原山の北側山腹に生じた地割れの写真を図-1.4.7.7に示す。これは、割れ目をもたらしたマグマの上昇による地表部の開口性割れ目の一部と考えられる。なお割れ目の伸びの方向は、σHmaxで、フィリピン海プレートの押しの方向に一致し、延長線上には三原山の中央縦穴火口が位置する。
また、21日の深夜、割れ目噴火の終了まぎわ、伊豆大島の南東側に群発地震が発生し、GPSで大きな変位が認められた。その後、翌朝になって、段差を伴う地割れを発見した(図-1.4.7.8)。これらのことから、地割れの地下に岩脈がはいったものと考えられた。
このように、玄武岩質火山の噴火に伴う地殻変動は、岩脈形成と密接な関係があるということがわかる。マグマの粘性が低いために、影響範囲は狭い。

図-1.4.7.7 割れ目噴火開始の数時間前に形成(千葉撮影)

図-1.4.7.8 伊豆大島南東部の落差を伴う地割れ 1986/11/21のマグマ貫入にともなって生成(11/22金子撮影)


(4)硫黄島の隆起活動

 硫黄島は
隆起を断続的に繰り返している。特に
2011年から2013年にかけて、 m、急激に隆起した。
この速度は、日本最高速度である。

http://blogs.yahoo.co.jp/ichikishigeo_07/archive/2014/1/24
この隆起によって海岸線は70mほど後退した

https://twitter.com/GSI_Research/status/415656327474458624/photo/1

参考文献

1)三松正夫(1962)昭和新山生成日記(自費出版).
2)東宮・()有珠火山地質図,産総研